健康データ・統計

健康寿命を延ばそう!

「平均寿命が延びているのは知っている。でも、何歳まで元気に生活できるの?

親が70代、80代になってくると、単に「何歳まで生きるか」だけではなく、自分で買い物に行けるか、旅行に行けるか、家で暮らし続けられるかといったことの方が気になってくるのではないでしょうか。

そこで、近年よく聞くようになったのが「健康寿命」です。

ただし、この健康寿命。実は調べてみると、厚生労働省が使う健康寿命と、介護保険データをもとにした「平均自立期間」では意味が違います。

さらに、「平均寿命-健康寿命=寝たきりの期間」と考えるのも正確ではありません。

この記事では、厚生労働省や国民健康保険中央会などの公的データをもとに、健康寿命とは何なのか、最新値はいくつなのか、私たちは何を目指せばよいのかを整理します。

まずは結論!ぴんころポイント🐢
  • 国が主に使う「健康寿命」は、健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間の平均です。
  • 最新の2022年値では、健康寿命は男性72.57年、女性75.45年。平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年です。
  • ただし、この8~12年がそのまま「寝たきり・要介護で過ごす期間」という意味ではありません。
  • 健康寿命を考えるうえでは、運動だけでなく、食事、睡眠、禁煙、健診、社会参加などを含めて生活機能を長く保つことが重要です。

1. そもそも「健康寿命」とは?

健康寿命を簡単にいうと、「健康な状態で生活できる期間」を表した指標です。

平均寿命が「何年生きるか」を表すのに対して、健康寿命は「どのような状態で生きるか」にも注目した指標といえます。

厚生労働省の健康日本21では、主に次の指標が健康寿命として使われています。

健康寿命=「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」の平均

具体的には、3年ごとに実施される国民生活基礎調査の大規模調査で、次のような質問をします。

「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」

この質問に「ない」と回答した人を健康、「ある」と回答した人を不健康として、年齢ごとの死亡率などと組み合わせて健康寿命を計算します。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「健康寿命の定義と算出方法」

「自己申告だから、あてにならない」のか?

ここで、

「えっ、自分で答えるだけなの?」

と思う方もいるかもしれません。

確かに、血液検査の数値や介護認定のような客観的な判定ではなく、本人の回答を使う指標です。

ただし、だからといって「客観性がなく、あまり意味のない指標」と考えるのも適切ではありません。

健康とは、単に病気があるかないかだけではありません。

例えば、糖尿病や高血圧の治療を続けながらでも、仕事や家事、外出、趣味を問題なく続けている人はたくさんいます。

逆に、大きな病名がなくても、腰痛や息切れ、気分の落ち込みなどによって外出や家事が大きく制限される人もいます。

厚生労働省の「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」でも、身体面だけでなく精神面・社会面まで含めた状態を捉えられることなどから、「日常生活に制限のない期間の平均」は健康寿命の指標として妥当と整理されています。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」

「病気がない=健康」ではありません。
病気を抱えていても日常生活を続けられる状態を長く保つ、という考え方が健康寿命を理解するポイントです。

2. 実は「健康寿命」には複数の指標がある

健康寿命を調べると数字がいくつも出てきて、「結局どれが本当なの?」と混乱することがあります。

これは、「健康」をどこで区切るかによって指標が変わるためです。

国の健康政策では、主に次のように整理できます。

指標 「健康」の考え方 主な用途
日常生活に制限のない期間 健康問題による生活上の制限がない 国の健康寿命の主指標
自分が健康であると自覚している期間 自分の健康状態を「よい~ふつう」と回答 補完的な指標
平均自立期間 介護保険で要介護2未満 自治体比較などで利用

つまり、単純に「健康寿命には2種類ある」というより、健康の捉え方によって複数の指標があると理解する方が正確です。

国保中央会の「平均自立期間」とは?

自治体の健康寿命ランキングなどでよく使われるのが、公益社団法人 国民健康保険中央会の「平均自立期間」です。

こちらは介護保険データを使い、要介護2以上を「不健康な状態」として計算します。

逆にいえば、要支援1・2や要介護1であっても、この指標上では「自立」として扱われます。

出典:国民健康保険中央会「平均自立期間」

厚生労働省の健康寿命と、国保中央会の平均自立期間を同じ数字として比較しないよう注意が必要です。
「健康」の定義も、使っているデータも異なります。

例えば、厚生労働省方式では「腰痛のため買い物が難しくなった」と本人が回答すれば、生活に制限がある状態として捉えられる可能性があります。

一方、平均自立期間では、その人が要介護2以上になっていなければ「自立」として扱われます。

どちらが正しいという話ではなく、見ているものが違うのです。

3. 【最新データ】日本の健康寿命は何歳?

2026年8月時点で、厚生労働省が公表している健康寿命の最新値は2022(令和4)年値です。

健康寿命は国民生活基礎調査の大規模調査などをもとに算出されるため、平均寿命のように毎年新しい値が出るわけではありません。

男性 女性
平均寿命 81.05年 87.09年
健康寿命 72.57年 75.45年
8.49年 11.63年

出典:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」

2019年の健康寿命は男性72.68年、女性75.38年でした。

2022年は男性72.57年、女性75.45年ですので、男性は0.11年短く、女性は0.07年長くなっています。

ただし厚生労働省によると、この変化には統計学的に明確な差は認められていません。

一方、平均寿命と健康寿命との差は、2019年から2022年にかけて男性・女性ともに有意に短縮しました。

2022年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年。
2019年と比較すると健康寿命自体に明確な伸びはみられませんでしたが、平均寿命との差は男女とも短くなりました。

平均寿命の「最新値」と混ぜないことも大切

ちなみに、平均寿命については健康寿命より新しい統計がすでに公表されています。

2024(令和6)年の日本人の平均寿命は、男性81.09年、女性87.13年です。

出典:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」

ただし、2024年の平均寿命から2022年の健康寿命を引いて「最新の差」を計算するのは適切ではありません。

平均寿命と健康寿命の差を比較するときは、同じ2022年のデータ同士を見るのが基本です。

4. 「男性約8.5年・女性約11.6年」は寝たきり期間ではない

健康寿命の記事で特に誤解されやすいのが、平均寿命との差です。

よく、

「男性は約9年間、女性は約12年間も不健康な生活を送る」

と説明されます。

厚生労働省の資料でも便宜上「平均寿命と健康寿命の差」「不健康期間」と表現されることがありますが、この数字の読み方には注意が必要です。

約9年・約12年ずっと寝たきりになる、という意味ではありません。

健康寿命は、一人ひとりを亡くなるまで追跡して「最後の何年間が不健康だったか」を測っているわけではありません。

年齢別の死亡率と、その年代で「健康上の問題による生活上の制限がある人」の割合を組み合わせて、集団として期待される期間を計算した統計指標です。

そのため、

  • 膝が痛くて階段を避けている
  • 腰痛で家事の一部が難しい
  • 体力低下で外出回数が減った
  • 病気によって仕事や運動が制限されている

といった状態も含まれ得ます。

「施設で生活する期間」や「寝たきり期間」を直接示した数字ではありません。

医療・介護の現場でも、「病気があるかどうか」と「生活できるかどうか」は別物です。病気を抱えながら買い物や趣味を続ける人もいれば、大きな病気がなくても体力低下によって生活範囲が狭くなる人もいます。健康寿命を見るときには「病名」よりも「生活への影響」という視点が大切です。

5. 本当に目指すべきは「ただ長生きすること」ではない

健康寿命という言葉が重要なのは、単純に数字を72歳から73歳へ伸ばすことだけが目的だからではありません。

本質的には、

年齢を重ねても、自分でできることをできるだけ長く保つ。

ことに意味があります。

厚生労働省が2024年度から進めている「健康日本21(第三次)」でも、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が大きな目標の一つに位置づけられています。

さらに、個人の努力だけではなく、住んでいる地域や社会環境まで含めて健康づくりを考える方向へ変わってきています。

出典:厚生労働省「健康日本21(第三次)」

つまり健康寿命は、

  • 歩く
  • 食事に気をつける
  • 健康診断を受ける

といった個人の健康管理だけではありません。

外出しやすい街、参加できる場所、人とのつながり、働き続けられる環境なども含めて考える必要があります。

6. 健康長寿・長野県は本当に全国1位?

「健康長寿県」として知られている長野県。

ここも、どの健康寿命を使っているのかを確認することが重要です。

国民健康保険中央会が公表している平均自立期間の2023(令和5)年値では、長野県は男女とも全国1位でした。

男性 女性
長野県 81.2年 84.9年
全国 79.7年 84.1年

女性は2016年値以降8年連続全国1位、男性も3年連続全国1位となっています。

出典:長野県「長野県の『健康寿命』(令和5年値)、女性が8年連続、男性が3年連続で全国1位」

長野県は健康長寿の背景として、

  • 高齢者の高い就業率
  • 野菜摂取量の多さ
  • 健康ボランティアによる自主的な健康づくり
  • 医師・保健師・管理栄養士などによる地域の保健医療活動

などを挙げています。

ただし、ここには重要な注意点があります。

長野県が全国1位なのは、ここで紹介している「要介護度をもとにした平均自立期間」です。
厚生労働省の「日常生活に制限のない期間の平均」とは指標が異なるため、健康寿命ランキングを見る際には算出方法まで確認しましょう。

また、「野菜を食べれば長野県のように長寿になる」「高齢になっても働けば健康になる」と単純に因果関係を結論づけることもできません。

食生活、身体活動、社会参加、地域環境、医療体制など、さまざまな要素が組み合わさっていると考えるのが妥当でしょう。

7. 健康寿命を延ばすために今日からできる6つのこと

では、私たちは具体的に何をすればよいのでしょうか。

健康寿命は「これをすれば必ず延びる」というものではありません。

一方で、厚生労働省の健康日本21(第三次)では、身体活動、食生活、喫煙、健診・検診、睡眠など、複数の分野から健康づくりを進めています。

① 今より少しでも多く身体を動かす

高齢者の場合、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日40分以上行うことが目安として示されています。

歩数では1日約6,000歩以上に相当します。

ただし、6,000歩歩けない人が「意味がない」ということではありません。

厚生労働省も、推奨量に達しなくても今より少しでも身体活動を増やすことを勧めています。

出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」

② 歩くだけではなく、筋力とバランスも保つ

同ガイドでは、高齢者に対して筋力・バランス・柔軟性などを含む多要素な運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2~3日行うことが推奨されています。

ウォーキングだけに偏るのではなく、

  • 椅子からの立ち座り
  • スクワット
  • かかと上げ
  • 体操
  • バランス練習

などを組み合わせることが現実的です。

持病や痛みがある場合は、無理に基準を達成しようとせず、医師や理学療法士などに相談してください。

③ 「運動の時間」以外も動く

健康づくりというと、ウォーキングや筋トレを思い浮かべます。

しかし、身体活動には、

  • 掃除
  • 洗濯
  • 買い物
  • 庭仕事
  • 通勤
  • 孫の送り迎え

などの日常生活も含まれます。

特に高齢になると、「運動をしているか」だけでなく、一日の中で座っている時間を増やしすぎないことも重要です。

「運動しなければ」と構えすぎる必要はありません。まずは買い物に歩いて行く、テレビのCM中に立つ、家事を一つ増やすなど、生活の中で活動量を増やす方が続けやすい人もいます。

④ 食事・睡眠・禁煙もセットで考える

健康寿命は筋力だけで決まりません。

厚生労働省のスマート・ライフ・プロジェクトでも、現在は適度な運動、適切な食生活、禁煙、健診・検診、良質な睡眠などが健康づくりの主要テーマとして掲げられています。

「毎日歩いているから大丈夫」と考えるのではなく、血圧や血糖、栄養状態、睡眠、喫煙なども含めて考える必要があります。

⑤ 健診・治療を「元気だから」と放置しない

高血圧や糖尿病などは、症状がほとんどないまま進行することがあります。

健康寿命を考えるなら、病気にならないことだけでなく、病気を早く見つけ、適切に管理し、生活への影響をできるだけ小さくするという視点も大切です。

治療中の病気がある方は、自己判断で薬を中断せず、定期的な診察を続けましょう。

⑥ 人とのつながり・社会参加を失わない

健康日本21(第三次)では、個人の食事や運動だけでなく、地域の人々とのつながりや社会活動への参加も健康を支える社会環境の一つとして位置づけられています。

社会参加というと難しく感じますが、

  • 仕事
  • 町内会や地域行事
  • 趣味の集まり
  • スポーツ
  • ボランティア
  • 友人との外出

なども含まれます。

外出する理由があると、自然に歩く、身支度をする、人と話す、予定を覚えるといった多くの活動が生まれます。

「健康のために運動する」だけでなく、「やりたいことを続けるために身体を使う」という視点も大切です。

全部を一度に変える必要はありません。まずは「10分多く歩く」「週2回だけ筋トレする」「健診の予約をする」「月1回友人と出かける」など、今の生活に一つ足すところから始めてみてください。

8. 健康寿命という数字より大切なこと

「健康寿命72.57歳」と聞くと、

「73歳を過ぎたら健康ではなくなるの?」

と思うかもしれません。

もちろん、そのような意味ではありません。

健康寿命は、個人の健康状態を予言する数字ではなく、日本人全体の健康状態を評価するための統計指標です。

80歳を過ぎても自立して暮らす人はいますし、60代で生活に大きな制限が出る人もいます。

ですから、個人にとって重要なのは「健康寿命の平均値を超えること」ではありません。

何歳まで生きるかだけではなく、何歳まで「自分の生活」を続けられるか。

買い物に行く。

自分で食事をつくる。

友人に会う。

旅行に行く。

仕事や地域活動を続ける。

自分でトイレに行く。

住み慣れた家で暮らす。

こうした一つひとつの生活を、できるだけ長く続けられる身体と環境をつくること。

それこそが、健康寿命という数字の先にある本当の目的だと考えます。

9. まとめ|健康寿命は「元気に生活できる時間」を考える指標

  • 国の健康寿命の主指標は「健康上の問題で日常生活に制限のない期間の平均」
  • 2022年の健康寿命は男性72.57年、女性75.45年
  • 同年の平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年
  • この差は「寝たきり・施設生活が9~12年続く」という意味ではない
  • 介護保険を使った「平均自立期間」は別の指標なので、ランキングを見るときは注意する
  • 長野県は2023年の平均自立期間で男女とも全国1位
  • 健康寿命を考えるうえでは、運動だけでなく食事・睡眠・禁煙・健診・社会参加などを総合的に考えることが大切

平均寿命を自分で決めることはできません。

しかし、身体を動かす、人と会う、治療を続ける、食事を整えるなど、自分の生活を長く続けるために今日からできることはあります。

「長生きするため」だけではなく、これから先も自分らしく暮らすために何を続けるか

健康寿命という数字を、そのきっかけとして使ってみてください。

参考文献・出典

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康寿命の定義と算出方法」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/hale/h-01-001.html
  2. 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001363069.pdf
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/hale/h-01-002.html
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/hale/h-01-003.html
  5. 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life24/index.html
  6. 国民健康保険中央会「平均自立期間」
    https://www.kokuho.or.jp/statistics/heikinjiritukikan.html
  7. 長野県「長野県の『健康寿命』(令和5年値)、女性が8年連続、男性が3年連続で全国1位」
    https://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-fukushi/happyou/press20240809.html
  8. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-004.html
  9. 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html

※本記事は、厚生労働省、国民健康保険中央会、長野県などの公的情報を確認したうえで、現役理学療法士が一般向けに整理・執筆しています。健康状態や運動の適否、病気の治療などについては個人差があります。個別の判断については、医師・理学療法士等の専門職や医療機関へご相談ください。