介護予防・フレイル

ラジオ体操は本当に健康にいい?高齢者への効果を最新研究から解説

介護施設でラジオ体操の音楽が流れると、さっきまで会話をしていた方が自然に腕を上げ、体を動かし始めることがあります。

「何十年も前に覚えたのに、体が覚えているんだな」と感じる場面です。

そんな身近なラジオ体操ですが、近年は高齢者を対象にした研究も増えています。認知症リスクとの関連や、バランス・持久力への効果など、興味深い結果が報告されています。

この記事では、最新の研究をもとに、ラジオ体操に期待できること・期待しすぎない方がよいこと、そして高齢者が安全に続けるポイントを、理学療法士の視点から整理します。

まずは結論!ぴんころポイント🐢
  • 高齢者の追跡研究では、ラジオ体操の実践と認知症リスクの低さに関連あり
  • 12週間のランダム化比較試験では、敏捷性・動的バランス、持久力などに小さな改善が確認された
  • ラジオ体操第一は4.0メッツ、第二は4.5メッツ。短時間でも中強度の運動になる
  • ただし3分だけでは運動量も筋力トレーニングも十分ではない。歩行や筋トレと組み合わせるのが基本

ラジオ体操は、高齢者の「運動の入口」として優秀

ラジオ体操第一・第二は、それぞれ13の運動で構成されています。第一は幅広い年代が取り組みやすい内容、第二は第一よりも運動強度が高く、筋力強化も意識した内容です。

ラジオ体操の大きな強みは、特別な道具がいらず、短時間で、すでに動きを知っている人が多いことです。

高齢者の運動では、「何をすれば最も効率がよいか」だけでなく、実際に始められるか、そして続けられるかが重要です。その点でラジオ体操は、運動習慣のきっかけとして取り入れやすい方法のひとつです。

たった3分でも運動になる?ラジオ体操の強度

運動の強さは「メッツ(METs)」という単位で表すことができます。1メッツは安静にしているときの強度です。

運動 運動強度
ラジオ体操第一 4.0メッツ
ラジオ体操第二 4.5メッツ
やや速歩 4.3メッツ
座って行うラジオ体操 2.8メッツ

つまり、立ってしっかり動くラジオ体操は、やや速めに歩く運動に近い強さがあります。短いからといって「ほとんど運動にならない」わけではありません。

一方、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に対して、3メッツ以上の身体活動を週15メッツ・時以上、目安として1日40分以上・約6,000歩以上行うことが推奨されています。さらに、筋力・バランス・柔軟性などを含む多要素な運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2〜3日行うことも勧められています。

ラジオ体操は「1日の運動を全部まかなうもの」ではなく、「今日も体を動かし始めるスイッチ」と考えると使いやすい運動です。

出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」

研究でわかってきたラジオ体操の健康効果

認知症リスクが18%低かったという全国調査

日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを使った前向きコホート研究では、介護認定を受けていない65歳以上の11,219人を平均5.3年間追跡しました。

その結果、体操をしていない人と比べて、「ラジオ体操のみ」を実践していた人では、認知症のリスクが18%低いという関連がみられました。年齢、性別、所得、持病、身体機能、歩行時間などの影響を統計的に調整した後も、この関連は残っています。

出典:Kanamori S, et al. SSM – Population Health. 2024.

ここで大切なのは、「18%低い」という数字の受け止め方です。これはラジオ体操をすれば認知症を18%予防できる、と証明した研究ではありません。もともとの健康意識や生活習慣、人とのつながりなど、完全には取り除けない違いが影響している可能性があります。

それでも、身近なラジオ体操の実践と認知症リスクの低さに関連がみられたことは興味深い結果です。なお、研究では「どのくらいの頻度で行えばよいか」までは明らかになっていません。

12週間の試験で、バランスと持久力に小さな改善

フレイルまたはプレフレイルの高齢者226人を対象にした12週間のランダム化比較試験では、ラジオ体操を加えたグループと、栄養プログラムのみのグループが比較されました。

その結果、ラジオ体操を加えたグループでは、敏捷性・動的バランスをみる8-foot up-and-goと、全身持久力をみる2分間足踏みテスト、運動セルフエフィカシーで、対照群より良い変化が確認されました。

出典:Osuka Y, et al. Journal of Epidemiology. 2024.

ただし、差は大きなものではありません。8-foot up-and-goの群間差は0.3秒、2分間足踏みは約3歩で、研究者自身も臨床的に意味のある大きさかどうかは明確ではないとしています。また、主要評価項目だった健康関連QOLには群間差がありませんでした。

「12週間で劇的に体力が上がる」という話ではありませんが、フレイル傾向のある高齢者でも取り組みやすく、一定の身体機能を支える可能性が示された研究と考えるのが妥当です。

糖尿病の入院患者では、筋肉量の減少が少なかった

2型糖尿病で約2週間入院した42人を調べた研究では、そのうち15人がラジオ体操第二を朝食前と夕食後の1日2回行っていました。

ラジオ体操を行った人では骨格筋量指数(SMI)がほぼ維持された一方、行わなかった人では低下していました。

出典:Kimura T, et al. BMJ Open Diabetes Research & Care. 2020.

ただし、この研究はランダム化比較試験ではなく、人数も42人と小規模です。入院中の治療や生活環境の影響もあるため、「ラジオ体操を1日2回すれば筋肉が減らない」と一般化することはできません。

それでも、活動量が落ちやすい場面で、短時間の全身運動が筋肉量の維持に役立つ可能性を示した研究として参考になります。

ラジオ体操会は「人と会う機会」にもなる

地域の早朝ラジオ体操会に参加していた高齢者84人と、条件をそろえた対照群84人を1年間比較した国内研究では、体操会に参加していたグループで歩行能力の維持と、友人との社会的つながりの指標に良い変化がみられました。

出典:植田拓也ほか「地域在住高齢者における早朝のラジオ体操会への参加が身体的,精神的,社会的側面に及ぼす効果」2024

ラジオ体操会には「運動する」だけでなく、決まった時間に外へ出て、人と顔を合わせるという側面があります。

介護予防では、身体活動だけでなく社会参加も大切です。地域の体操会に参加する場合、ラジオ体操そのものだけでは説明できないメリットもあると考えられます。

ラジオ体操が得意なこと・苦手なこと

研究結果を踏まえると、ラジオ体操は「万能な運動」というより、短時間で全身を動かし、運動習慣をつくることが得意な体操と考えるのが現実的です。

目的 ラジオ体操の位置づけ
全身を動かす ◎ 13の動きで上肢・下肢・体幹を短時間で動かせる
バランス・敏捷性・持久力 ○ 高齢者のランダム化比較試験で小さな改善を確認
認知症対策 ○ リスクの低さとの関連は報告されているが、予防効果の証明ではない
筋力アップ △ 維持に役立つ可能性はあるが、筋力を高めるなら別途筋トレを
減量 △ 1回約3分なので、ラジオ体操だけで十分な運動量を確保するのは難しい

たとえば、朝にラジオ体操を1回行い、日中は歩く時間を少し増やす。週に2〜3日は椅子からの立ち座りなどの筋力トレーニングを加える。こうすると、ラジオ体操の「続けやすさ」を活かしながら、不足しやすい運動を補えます。

NHKでは毎朝6:30から放送しています。私の周りでは日課にしている方も多いです

▶︎関連記事:自主トレを習慣化する7つの方法【2026年版】

効果を引き出すコツは「大きく・ていねいに」。ただし無理はしない

ラジオ体操は動きを覚えている人が多いぶん、いつの間にか動きが小さくなったり、流れ作業になったりしやすい運動でもあります。

  1. 痛みのない範囲で、普段より少し大きく動く
    「最大まで動かす」必要はありません。肩・腰・ひざの状態に合わせて、無理のない範囲で丁寧に動かします。
  2. 腕だけでなく、足や体幹も意識する
    腕の運動に見えても、かかとの上げ下げ、ひざの曲げ伸ばし、体幹の曲げ伸ばしやねじりが含まれています。全身で動くことを意識します。
  3. 反動に頼りすぎず、呼吸を止めない
    勢いだけで動くと、関節に負担がかかることがあります。自然に呼吸しながら、自分で動きをコントロールできる範囲で行います。
  4. 立位が不安なら、座って行う
    転倒が心配な方は、立って行うことにこだわる必要はありません。座位でも体を動かすことには意味があります。
まずはラジオ体操第一を1回。余裕があれば、その日のどこかで10分歩く、椅子からの立ち座りを数回行うなど、別の活動を少し足してみましょう。

高齢者は「その日の体調」に合わせることが最優先

ラジオ体操は比較的取り組みやすい運動ですが、誰にとっても同じ強度が安全とは限りません。厚生労働省も、高齢者では体力や持病に応じて運動量を調整し、毎回の運動前後に体調を確認することを勧めています。

  • 胸の痛み、動悸、めまい、ふらつき、いつもと違う強い疲れが出たら、その場で中止する
  • 肩・腰・ひざなどに強い痛みがある動きは、範囲を小さくするか休む
  • 転倒が心配なら、椅子に座る、手すりや安定した家具の近くで行う
  • 心臓病、高血圧、糖尿病などで運動制限を受けている場合は、医師や医療専門職に確認する
  • 暑さ・寒さが厳しい日や体調不良の日は、環境と体調を優先して無理をしない

出典:厚生労働省「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」

続けるなら、放送や公式アプリを「合図」にする

習慣化のコツは、やる気に頼るより、始めるきっかけを固定することです。

NHKで毎日6時30分〜6時40分にラジオ体操が放送されています。朝の放送をそのまま生活の合図にする方法はシンプルです。

朝が難しければ、時間帯にこだわる必要はありません。「朝食後」「昼のニュースの前」「入浴前」など、毎日の決まった行動とセットにした方が続けやすくなります。

また、かんぽ生命の公式「ラジオ体操」アプリでは、立位・座位を選べるほか、スマートフォンのカメラを使ったAI判定・採点機能も利用できます。

出典:かんぽ生命「ラジオ体操」公式アプリ

豆知識:ラジオ体操は「簡易保険の事業」から始まった

ラジオ体操のルーツは1928年。かんぽ生命の前身である逓信省簡易保険局が中心となり、「国民保健体操」として制定され、同年11月からラジオ放送が始まりました。

現在のラジオ体操第一は1951年、第二は1952年に制定された3代目。1999年には、年齢や障がいの有無を問わず取り組める「みんなの体操」も誕生しています。

出典:かんぽ生命「ラジオ体操の歴史」

まとめ:ラジオ体操は「3分で完結する健康法」ではなく、動き続けるための入口

  • 高齢者の追跡研究では、ラジオ体操の実践と認知症リスクの低さに関連がみられている
  • 12週間のランダム化比較試験では、バランス・敏捷性や持久力などに小さな改善が確認された
  • 第一は4.0メッツ、第二は4.5メッツと中強度だが、約3分だけでは1日の身体活動量として十分ではない
  • 歩行や筋力トレーニングと組み合わせ、体調に合わせて無理なく続けることが大切

ラジオ体操の価値は、短時間で多くのことを解決できることよりも、「今日も少し体を動かす」という行動を始めやすいことにあります。

音楽が流れると自然に体が動くなら、それは大きな強みです。まずは1回。その3分を、歩くことや筋力トレーニングにつなげていく。そんな使い方が、高齢期の運動習慣には合っています。

参考文献・出典

Kanamori S, et al. Taiso practice and risk of functional disability and dementia among older adults in Japan: The JAGES cohort study. SSM – Population Health. 2024.

Osuka Y, et al. Effects of Radio-Taiso on Health-related Quality of Life in Older Adults With Frailty: a Randomized Controlled Trial. Journal of Epidemiology. 2024.

Kimura T, et al. Japanese radio calisthenics prevents the reduction of skeletal muscle mass volume in people with type 2 diabetes. BMJ Open Diabetes Research & Care. 2020.

植田拓也ほか「地域在住高齢者における早朝のラジオ体操会への参加が身体的,精神的,社会的側面に及ぼす効果」日本予防理学療法学会雑誌. 2024.

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 高齢者版」

厚生労働省「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」

かんぽ生命「ラジオ体操の歴史」

NPO法人全国ラジオ体操連盟「ラジオ体操のラジオ・テレビでの放送時間」

かんぽ生命「ラジオ体操」公式アプリ

本記事は、公的機関の資料や研究論文などの情報をもとに、経験約15年の現役理学療法士が一般向けに解説したものです。個別の症状や治療、運動の可否などについては、医師・医療専門職などの専門機関へご相談ください。