制度を学ぶ

2026年度版:入院後のリハビリについて解説

「リハビリって、いつまで続けられるの?」
「どれくらい良くなるものなの?」

この質問は、現場でとてもよく聞かれます。

言ってしまえば「人によりけり」なのですが、それだけでは答えになりませんよね。
この記事では、

  • 専門職がどうやって「回復の見込み」を考えているのか(予後予測)
  • 入院してリハビリできる期間には上限があること
  • 退院後にリハビリを続ける方法と、家族にできること

を、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。

よくある誤解:「入院していれば、ずっとリハビリしてもらえる」と思っている方が意外と多いのですが、実は入院期間には病気ごとの上限が定められています。詳しくは記事の中で解説します。

 

リハビリを進めるのに必要な「予後予測」

医師やリハビリ職種は、患者さんの「予後予測」というものを行います。

☺️この人は良くなりそうだな
😥この人はちょっと厳しそうだな

という感覚は誰にでもあると思いますが、それをなるべく客観的なデータをみながら行うのが予後予測です。

「発症から○日で、これくらい動けているから、今後はこう経過していくだろう」と見通しを立て、リハビリの計画や退院先の相談に役立てます。

「脳卒中 予後予測」と検索するだけでも、約9000件ヒットします。
それだけ多くの研究が積み重ねられている分野です。
論文検索結果

予後予測に関わる要因は、ざっくり言うと次のとおりです。

  • 病気や怪我をする前の状態(もともと元気だったか)、その他の持病
  • 病気や怪我の重症度
  • 発症後数日後の状態変化の程度
  • リハビリの進み具合・経過
  • 年齢
  • 家族など周囲のサポート状況

意外に思われるかもしれませんが、家族のサポート状況も予測の大事な材料です。体の状態がまったく同じでも、「家に支えてくれる人がいるかどうか」で自宅に帰れるかが変わるケースは、現場では珍しくありません。

重症度は人によって全然違う

例えば「脳梗塞」といってもピンキリです。症状も、脳梗塞の程度や部位によって人それぞれ全く違います。部位によって働きが違いますし、太い血管or細い血管が障害されるかで話は変わってきます。亡くなる方からまったく症状のない方まで様々です。

出典:国立循環器病研究センターより

 

正直な話:リハビリの「濃さ」には差がつきます

少し言いにくい話ですが、現場の実情もお伝えします。

リハビリスタッフの人数や時間は限られています。そのため、「伸びしろが大きい時期・状態の方」にリハビリの時間を厚く配分するのが一般的です。

逆に、かなり軽症の方には「自主練習」のメニューを設定して、ご自分で取り組んでもらうことも多くあります。

濃度に差はついても、「見捨てられる」わけではありません。重い障害が残った方にも、拘縮(関節が固まること)の予防、車いすや装具の調整、ご家族への介助指導など、その方に必要な関わりは続きます。気になることがあれば遠慮なくスタッフに聞いてください。

入院できる期間は決まっている!?

まず、病気になってからの期間は、おおざっぱに3つの時期に分けられます。
定義がはっきり決まっているわけではありませんが、一般的には下記のとおりです。

  • 急性期:病気の発症からだいたい14日くらい。命を守る治療が中心
  • 回復期:急性期を終え、病状が安定するまで(だいたい6ヶ月)。集中的なリハビリの時期
  • 生活期(維持期):退院してから。生活の中で機能を保ち、活かす時期

急性期を過ぎてもまだリハビリが必要と判断された場合、多くの方は回復期リハビリテーション病棟に移ったり、リハビリ病院に転院したりして、リハビリ生活が続きます。

そこでは、脳血管疾患の方だと1日最大9単位(180分=3時間)のリハビリを行うこともあります。

しかし、回復期病院・病棟へ移ったあとは好きなだけリハビリ入院できるわけではなく、病気の種類ごとに入院期間の上限が定められています。

 

 

ざっくりまとめると、

  • 脳卒中などの脳血管疾患150日(高次脳機能障害を伴う重症例などは180日=約6ヶ月)
  • 大腿骨などの骨折90日(約3ヶ月)など

が上限の目安です。

Q. 上限の日まで入院できるの? それとも追い出されるの?

A. 実際には、上限より早く退院する方がほとんどです。「目標を達成したら退院」が基本で、上限日数はあくまで「ここまでしか保険でみられません」という枠のこと。病院もベッドを空けて、埋めてと回転率をあげなければならないのです。軽症の方をあまり長く入院させておいてくれる病院はないかも….

💡ポイント:入院中から「退院後の生活」を見据えて、住宅改修(手すり・段差解消)や介護保険の申請を早めに進めておくと、退院がスムーズです。申請から認定までは1ヶ月ほどかかるのが一般的です。

退院後のリハビリは?

👩‍⚕️退院後も、リハビリの必要性がある方はたくさんいます。

医師の判断があった場合、主に次のような選択肢があります。

  • 病院やクリニックでの外来リハビリ(医療保険)
  • 介護保険:介護施設に通っての通所リハビリ(デイケア)
  • 介護保険:介護施設へ入所(泊まり)してのリハビリ
  • 訪問リハビリ(スタッフが自宅に来てくれる)
  • 自費(保険適応外)のリハビリ → 回数・内容は個人の自由

※基本的に、介護保険を使う通所リハビリと医療保険の外来リハビリは併用できません。要介護認定を受けている方は、介護保険のリハビリが優先される仕組みになっています。

「リハビリ難民」という言葉も

筆者の地域(田舎です)では、通所・入所リハビリ施設に空きがないところも多々あります。リハビリの場を探しているのになかなか見つからない——そんな方は「リハビリ難民」と呼ばれることもあるようです。

だからこそ、退院が決まってから探し始めるのではなく、入院中から相談しておくことが大切です。

医療機関にはMSW(メディカルソーシャルワーカー)と呼ばれる相談員さんがいます。退院後のサービス利用や施設探し、費用のことまで相談に乗ってくれます。すでに介護保険を利用している方なら、担当のケアマネジャーも強い味方です。

ご家族ができること

「本人のリハビリだから、家族は見守るだけ」と思っていませんか?
実は、ご家族の関わりが回復を後押しすることは少なくありません。

  • リハビリの見学をお願いする:どんな練習をしているか、どこまで動けるかを実際に見ると、退院後のイメージがつかめます。介助方法の指導を受けられることもあります
  • 本人のもともとの生活を伝える:「畑仕事が生きがいだった」「毎朝散歩していた」といった情報は、リハビリの目標設定にとても役立ちます
  • 面会でよく話し、よく聞く:入院中は気持ちが沈みがちです。会話や励ましは立派なリハビリの応援です
  • 家の環境を整えておく:手すりの設置や段差の解消など。介護保険の住宅改修費支給(上限20万円・自己負担1〜3割)が使える場合があります

主治医・リハビリスタッフに聞いておきたい質問リスト

「何を聞いたらいいかわからない」という声もよく聞きます。
面談のときに使える質問例をまとめました。メモしていくのがおすすめです。

回復の見通しについて
・今の時点で、どこまでの回復が見込めそうですか?
・歩けるようになる可能性はどのくらいありますか?

期間について
・入院はいつ頃までの予定ですか?
・退院の目安(目標)は何ですか?

退院後について
・退院後もリハビリは必要ですか? どんな形が合っていますか?
・家で気をつけること、家族が手伝うべきこと・手伝いすぎない方がいいことは?
・住宅改修や福祉用具は必要ですか?

リハビリは「病院で終わり」ではありません

入院期間に上限があると聞くと、不安になるかもしれません。

でも、生活期のリハビリで大切なのは、訓練室での練習だけではなく「生活そのものをリハビリにすること」です。

  • 自分でできる着替えや家事は、時間がかかっても自分でやる
  • 買い物や趣味、地域の集まりなど外に出る機会を保つ
  • 地域の体操教室や「通いの場」に参加する

つまり、「病院を出てからが本番」です。
特別な訓練でなくても、毎日少しずつ体を動かし続けることが、退院後のいちばんのリハビリになります。

この記事のまとめ
  • 回復の見込み(予後予測)は、重症度・元の状態・経過・サポート状況などから総合的に判断される
  • 回復期リハビリ病棟の入院には上限があり、脳血管疾患で最長150〜180日、骨折で90日が目安
  • 退院後は外来・通所・訪問・自費など複数の選択肢がある(通所リハと外来リハは原則併用不可)
  • 施設に空きがない地域もあるため、入院中からMSWやケアマネに相談
  • 家族の情報提供・見学・環境整備は回復の大きな後押しになる

※本記事の入院期間上限などの制度情報は執筆時点のものです。診療報酬・介護報酬の改定により変わる場合がありますので、最新情報は医療機関・自治体にご確認ください。