リハビリ・介護

リハビリはいつまで続けられる?回復期リハビリの入院期間と退院の目安

「リハビリは、いつまで続けられるのでしょうか?」

脳卒中や骨折で入院した本人や家族から、よく聞かれる質問です。

「まだ歩けないのに退院の話が出た」
「もう少し入院してリハビリを続けたい」
「入院期限を過ぎたら、リハビリは終わってしまうの?」

このような不安を感じる方もいるでしょう。

回復期リハビリテーション病棟には、病気やケガごとに制度上の入院期間の上限があります。ただし、入院期間の上限と、身体が回復できる期間は同じではありません。

退院はリハビリの終了ではなく、病院から自宅や施設へ生活の場を移す節目です。

この記事では、回復期リハビリテーション病棟の仕組みや入院期間、退院時期が決まる考え方を、理学療法士の視点から解説します。

まずは結論!今日のぴんころポイント🐢
  1. 回復期リハビリテーション病棟には、病気やケガごとに入院期間の上限がある
  2. 上限日数までの入院が、全員に保証されているわけではない
  3. 退院時期は、身体機能だけでなく自宅環境や家族の介護力も含めて決まる
  4. 退院はリハビリの終了ではなく、生活の中で続ける次の段階である

1.リハビリは「急性期・回復期・生活期」に分かれる

病気やケガをした後のリハビリは、大きく3つの時期に分けられます。

時期 主な目的 主な場所
急性期 治療を優先しながら、寝たきりや合併症を防ぐ 急性期病院
回復期 歩行や着替えなど、生活に必要な動作を集中的に練習する 回復期リハビリテーション病棟
生活期 自宅や施設で生活しながら、身体機能や活動を維持・改善する 自宅、通所施設、介護施設など

急性期・回復期・生活期のリハビリの流れと、回復期リハビリテーション病棟の入院期間の目安
リハビリの流れと入院期間の目安。画像をクリックすると拡大できます。

図に示した期間は一般的な目安です。急性期病院で過ごす期間や回復期リハビリテーション病棟への転院時期、実際の入院期間は、病状や回復状況によって異なります。

急性期|治療と早期離床を進める

急性期は、病気やケガを発症した直後の時期です。脳卒中であれば血圧管理や再発予防、骨折であれば手術や全身状態の管理など、まずは治療が優先されます。

その一方で、状態が許す範囲で早期から身体を動かします。

急性期リハビリの主な目的
寝たきりや関節の硬さを防ぐ
筋力・体力の低下を抑える
肺炎や血栓などの合併症を防ぐ
座る、立つ、歩く練習を始める

安静が必要な時期でも、必要以上に寝たままでいると筋力や体力が低下します。どこまで動いてよいかは、医師やリハビリ専門職の指示に従ってください。

回復期|退院後の生活に必要な動作を練習する

全身状態が安定すると、回復期へ移ります。回復期リハビリテーション病棟では、単に手足を動かすだけでなく、次のような生活動作を練習します。

基本動作 身の回りの動作 その他の支援
起き上がる
立ち上がる
歩く
階段を上がる
トイレ
着替え
食事
入浴
会話・飲み込み
家事
福祉用具
家族への介助指導

医師、看護師、介護職、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなどが連携し、退院後の生活を準備します。

生活期|日常生活そのものがリハビリになる

退院後は、生活期のリハビリへ移ります。

自宅で着替える、トイレへ行く、家事をする、買い物へ出かけるといった活動も重要なリハビリです。必要に応じて、通所リハビリや訪問リハビリなどを利用します。

退院後は「訓練を受けること」だけがリハビリではありません。自分でできる生活動作を続け、外出や趣味、家庭での役割を取り戻すことも大切です。

2.回復期リハビリテーション病棟とは

回復期リハビリテーション病棟は、脳卒中や骨折などによって日常生活に支障が生じた方が、集中的なリハビリを受けるための病棟です。

特徴は、訓練室だけでなく、病棟での生活そのものをリハビリとして考えることです。

訓練で行うこと 病棟生活で行うこと
歩行練習
立ち上がり練習
着替えや入浴の練習
食堂まで移動する
日中は着替えて過ごす
トイレまで歩く
できる動作は自分で行う

訓練室で一度できただけでは、自宅でできるとは限りません。

「訓練ではできる」を「普段の生活でもできる」に変えることが、回復期リハビリテーション病棟の重要な役割です。

回復期リハビリテーション病棟へ直接入院するのではなく、一般的には急性期病院で治療を受け、状態が安定してから転院します。

3.回復期リハビリテーション病棟の入院期間には上限がある

回復期リハビリテーション病棟では、対象となる病気や状態ごとに、制度上の算定上限日数が定められています。

主な病気・状態 上限日数
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脊髄損傷、頭部外傷、脳腫瘍、脳炎、多発性硬化症など 150日
高次脳機能障害を伴う重症脳血管障害、重度の頸髄損傷、頭部外傷を含む多部位外傷 180日
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節、膝関節の骨折、二肢以上の多発骨折 90日
手術や肺炎などの治療中の安静によって生じた廃用症候群 90日
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節、膝関節の神経・筋・靱帯損傷 60日
股関節または膝関節の人工関節置換術後 90日
急性心筋梗塞や狭心症などの心大血管疾患、心臓手術後 90日

すべての骨折や病気が回復期リハビリテーション病棟の対象になるわけではありません。対象になるかは、病名だけでなく、発症時期、治療内容、身体機能、日常生活への影響などを踏まえて判断されます。

4.「上限90日」は90日間入院できるという意味ではない

制度上の日数は、回復期リハビリテーション病棟の入院料を算定できる上限です。

たとえば、大腿骨骨折の上限が90日であっても、全員が90日間入院するわけではありません。30日や60日程度で退院する方もいれば、上限に近い期間まで入院する方もいます。

上限日数=入院を保証された日数ではありません。実際の退院時期は、一人ひとりの回復状況と退院後の生活環境によって異なります。

退院時期を決める主な要素

確認する要素 主な内容
病状・身体機能 病気やケガの重症度、手術後の経過、歩行能力、認知機能、合併症
日常生活動作 起き上がり、トイレ、着替え、入浴、食事、薬の管理
自宅環境 玄関の段差、階段、廊下やトイレの広さ、手すりの有無
家族の介護力 介助できる人、仕事による不在時間、家族の年齢や健康状態
退院後の支援 介護サービス、福祉用具、住宅改修、施設利用の有無

完全に治っていなくても退院することがある

退院は、麻痺や痛みがすべてなくなった時点で決まるわけではありません。

退院後の生活が可能と考えられる例
一人で、または見守りで移動できる
家族の介助があれば生活できる
杖、歩行器、手すりなどを使えば安全に生活できる
介護サービスを利用すれば自宅で過ごせる
介護施設などで必要な支援を受けられる

多少の麻痺や痛み、歩きにくさ、介助が残っていても、退院後の生活を成り立たせる見通しが立てば退院を検討します。

退院は「リハビリの打ち切り」ではありません。入院でなければできない治療や支援の必要性が低くなり、次の生活の場へ移る時期になったということです。

5.入院期間が長いほど回復するとは限らない

本人や家族にとっては、長く入院している方が安心に感じられるかもしれません。しかし、入院期間を延ばせば、その分だけ必ず回復するわけではありません。

病院は、手すりがあり、段差が少なく、困ったときにはスタッフを呼べる安全な環境です。一方、自宅では、実際の生活動作や家事、外出などが必要になります。

病院での能力がある程度高まった後は、住み慣れた環境へ戻り、実生活の中で身体を使うことが次のリハビリになる場合もあります。

入院によるデメリットとHAD

必要な入院は重要ですが、入院生活には次のようなデメリットもあります。

入院によって起こりやすい変化 生活への影響
ベッドで過ごす時間が増える 筋力や体力が低下しやすい
家事や買い物をしなくなる 生活に必要な活動量が減る
身の回りのことを介助される 自分で行う機会が減る
家族や地域との交流が減る 役割や社会とのつながりが失われやすい
病院の生活に慣れる 自宅生活への不安が強くなることがある

高齢者では、病気そのものが改善しても、入院をきっかけに歩行、トイレ、着替え、入浴、食事などの能力が低下することがあります。

この状態を、HAD(Hospitalization-Associated Disability:入院関連機能障害)と呼びます。

JAMAに掲載された総説では、HADは70歳を超える入院患者のおよそ3人に1人に生じると報告されています。

HADが起こる主な要因

患者側の要因 入院中の要因
高齢
フレイル
入院前からの歩行能力低下
認知機能低下
低栄養
長時間の安静
活動量の低下
過度な介助
点滴やカテーテル
食事量の低下
睡眠や生活リズムの乱れ

HADは、入院の原因となった病気だけで起こるものではありません。本人がもともと持つ脆弱性に、入院中の安静や環境変化などが重なって発生します。

「入院中だから寝ていた方が安全」とは限りません。病状が許す範囲でベッドから離れ、食事、着替え、トイレなどを可能な範囲で自分で行うことが、生活機能の低下予防につながります。

入院前の状態を医療者へ伝える

HADを早く見つけるためには、入院前に何ができていたのかを知る必要があります。

家族から伝えておきたいこと
入院前は一人で歩いていたか
杖や歩行器を使用していたか
トイレ、着替え、入浴を一人で行えていたか
家事、買い物、外出をしていたか
認知機能や生活の様子に変化がなかったか

入院後の姿だけを見ていると、「もともとできなかった」と判断される可能性があります。入院前の生活状況は、本人や家族から具体的に伝えることが大切です。

6.入院中に本人・家族が確認したい7つのこと

退院直前になって慌てないためには、入院の早い段階から退院後の生活を確認しておきましょう。

確認項目 確認する内容
1.入院期間 制度上の上限ではなく、現在想定されている退院時期
2.退院先 自宅、家族宅、介護施設など、どこを想定しているか
3.退院時の目標 歩行、トイレ、入浴、玄関の段差など、具体的に何を目指すか
4.必要な介助 家族がどの動作を、どの程度手伝う必要があるか
5.自宅環境 手すり、住宅改修、介護ベッド、歩行器などが必要か
6.退院後の支援 介護保険の申請、訪問・通所サービス、福祉用具の利用
7.退院後の注意点 自主トレーニング、転倒予防、避ける動作、受診の目安

「最長で何日入院できますか?」だけでなく、「現在の状態では、いつごろの退院を想定していますか?」と確認しましょう。

7.退院を急に告げられたと感じたときの対応

病院側は早い段階から退院を想定していても、本人や家族に十分伝わっていないことがあります。

退院に不安があるときは、「まだ退院できない」と伝えるだけでなく、生活上の問題を具体的に説明しましょう。

曖昧な伝え方 具体的な伝え方
一人にするのが心配です 日中は家族が不在で、本人だけではトイレへ行けません
家では歩けないと思います 玄関に20cmの段差があり、現在は上がることができません
転びそうで不安です 夜間に一人で立ち上がるため、見守りがない時間の転倒が心配です

あわせて、次の点を病院へ確認します。

・退院可能と判断した理由
・現在できる動作と、できない動作
・自宅生活で想定される危険
・退院までに改善が見込まれる部分
・家族に必要となる介助
・利用できる介護サービス
・自宅以外の退院先

退院調整が難しいときは、主治医やリハビリ専門職だけでなく、退院支援を担当する医療ソーシャルワーカーにも相談してください。

8.まとめ|退院はリハビリの終わりではない

回復期リハビリテーション病棟には、病気やケガごとに60日、90日、150日、180日などの入院期間の上限があります。

ただし、上限日数までの入院が全員に保証されているわけではありません。退院時期は、身体機能だけでなく、自宅環境、家族の介護力、介護サービスなどを含めて判断されます。

また、高齢者では、入院中の安静や活動量低下によって、入院前にはできていた歩行や着替え、トイレなどが難しくなるHADが生じることもあります。

長く入院することだけを目的にするのではなく、退院後の生活から逆算して、入院中に必要な動作を練習することが大切です。

今日のぴんころポイント🐢
  1. 入院期間の上限と、身体が回復できる期間は同じではない
  2. 退院時期は、退院後の生活が成り立つかを含めて判断される
  3. 入院中も、できる生活動作は可能な範囲で続ける
  4. 退院後は、実際の生活の中でリハビリを継続する

次の記事では、退院後に利用できるリハビリの種類や、どこまで回復が期待できるのか、必要なリハビリを受けられない「リハビリ難民」の問題について解説します。

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参考資料

※本記事は、一般的な制度やリハビリテーションについて解説したものです。実際の入院期間、治療方針、退院時期は、病状や医療機関の体制などによって異なります。個別の判断については、主治医や担当する医療専門職へご相談ください。