リハビリ・介護

介護が必要になったら、介護保険サービスを使おう!

施設で高齢者が楽しそう

「最近、親の物忘れが増えた気がする」
「退院はできたけど、家での生活が前より大変になった」
「自分たちだけで介護できるだろうか……」

こんな不安、ありませんか?

年齢を重ねれば、誰でも少しずつ身体の機能は衰えていきます。「まだ先のこと」と思っていても、介護はある日突然やってくることが少なくありません。いざというときに慌てないために、まず知っておきたいのが介護保険制度です。

この記事の大事なこと

  • 介護保険は40歳から全員が加入している「みんなの保険」
  • 利用の入り口は市区町村への「申請」。家族が代わりに申請してもOK
  • サービス選びはケアマネジャーが一緒に考えてくれるので、全部自分で調べなくてよい
  • 介護保険の本分は「自立支援」。使ってまた元気になるための制度

いま、介護は特別なことではなくなっています。厚生労働省の「令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護・要支援の認定者数は約708万人。65歳以上の方の約19.4%、およそ5人に1人が認定を受けている計算です(出典:厚生労働省「介護保険事業状況報告」)。

とはいえ、過度に恐れる必要はありません。日本には、介護を社会全体で支えるしっかりとした制度があります。この記事では、介護保険の基本のしくみ、申請から利用までの流れ、サービスの種類を、現場で働く理学療法士の目線からやさしく解説します。

介護保険は「知っている人」ほど上手に使えます。この記事で、はじめの一歩を一緒に踏み出しましょう。

介護保険とは?介護を社会全体で支えるしくみ【基礎知識】

介護保険は、介護が必要になった方を社会全体で支えるための公的な保険制度です。

かつて日本では、親の介護は家族が担うのが当たり前とされていました。しかし少子高齢化や核家族化が進み、家族だけで介護を抱えるのは難しい時代になっています。

私は地方で理学療法士として働いていますが、高齢の患者さんからこんな声を本当によく聞きます。

👵「息子は東京に住んでるんです。娘はわりと近くにいるけど、あっちのご両親の介護もあってね」

人口の東京一極集中と高齢化。現場にいると、ひしひしと感じます。仕事をしながら介護をする「ビジネスケアラー」は2030年に約318万人にのぼり、介護を理由に仕事を辞める「介護離職」も年間約10万人と推計されています(出典:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」)。

家族だけで抱え込まず、共倒れを防ぐために生まれたのが、2000年(平成12年)にスタートした介護保険制度です。制度の柱は次の3つです。

①自立支援:すべてのお世話をするのではなく、ご本人ができることはご自身で行い、能力を活かして自立した生活を目指すこと

②利用者本位:利用者自身がサービスを選び、事業者と契約して利用できること

③社会保険方式:みんなで保険料を出し合い、必要な方にサービスを届けるしくみであること

運営の主体は全国の市区町村。財源は、私たちが納める保険料が50%、国・都道府県・市区町村の公費(税金)が50%で賄われています(出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」)。

介護保険に入るのは誰?――実は40歳から「当事者」です

「介護保険は高齢者のもの」と思っていませんか? 実は40歳になると全員が介護保険に加入し、保険料の支払いが始まります。被保険者は年齢によって2つに分かれます。

第1号被保険者 第2号被保険者
年齢 65歳以上 40〜64歳
利用できる条件 原因を問わず、要介護・要支援状態になったとき 16種類の「特定疾病」(末期がん、関節リウマチ、初老期の認知症、脳血管疾患など)が原因のときに限る
保険料の納め方 原則、年金から天引き 健康保険料と一緒に徴収

つまり、この記事を読んでくださっている方も、すでに介護保険の「当事者」かもしれません。ご自身のため、そしてご家族のためにも、制度の基本を知っておくことは大きな安心につながります。

【最新データ】要介護認定者は708万人・高齢者の約5人に1人

介護保険を利用している人は、どのくらいいるのでしょうか。厚生労働省の最新の年報から、主な数字を見てみましょう(出典:厚生労働省「令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)」)。

項目 数値(令和6年3月末時点など)
要介護・要支援認定者数 約708万人(前年度比2.0%増・過去最多)
65歳以上に占める認定者の割合 19.4%(約5人に1人)
サービス受給者数(1か月平均) 約609万人(令和5年度)

認定者数は制度開始から増え続け、初めて700万人を超えました。それだけ多くの方が、実際に介護保険を「使って」生活しているということです。

数字だけ見ると不安になるかもしれませんが、裏を返せば「介護保険を使うのはごく当たり前のこと」。恥ずかしいことでも、特別なことでもありません。

介護保険サービスを使うには?申請から利用までの4ステップ

病気や加齢などで日常生活に支障が出てきたとき、頼りになるのが介護保険サービスです。利用までの流れは、次の4ステップです。

①申請する
65歳以上の方は、お住まいの市区町村の窓口(市役所・地域包括支援センターなど)で申請します。ご本人だけでなく、ご家族が代わりに申請することもできます

②認定調査・審査を受ける
申請後、行政による聞き取り調査(認定調査)や、主治医の意見書をもとにした審査が行われます。

③介護度が決まる
軽い方から順に、要支援1 → 要支援2 → 要介護1〜要介護5の7段階。要介護5がもっとも介護の必要性が高い状態です。

④サービスを利用する
介護保険を使えば、限度額の範囲内で1〜3割の自己負担でサービスを受けられます。要介護度が高いほど限度額は大きくなります。

くわしい流れは、厚生労働省の解説ページも参考になります。
▶ サービス利用までの流れ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」)

「どんなサービスを使えばいいの?」――要介護認定を受けた方には、必ずケアマネジャー(介護支援専門員)が担当としてつき、状態や希望に合わせた「ケアプラン」を作成してくれます。まずは「こういうことで困っている」と気軽に相談することが第一歩です。

介護サービスの種類一覧――居宅・施設・地域密着型の3分類

介護保険で受けられるサービスは、大きく3つの分類に分かれます。

①居宅サービス――自宅で暮らしながら受けるサービス

【訪問型】専門スタッフがご自宅に来てくれます
訪問介護(ホームヘルプ):食事・入浴・排泄などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物などの生活援助
訪問看護:看護師が自宅を訪問し、健康管理や医療的なケアを実施
訪問リハビリテーション:理学療法士や作業療法士が自宅でリハビリを提供

【通所型】施設に通って受けるサービス
通所介護(デイサービス):日帰りで入浴・食事・レクリエーション・機能訓練など
通所リハビリテーション(デイケア):医師の指示のもと、リハビリを中心に行う

【短期入所型】短期間だけ施設に泊まるサービス
短期入所生活介護(ショートステイ):数日〜数週間、施設に泊まって介護を受ける。ご家族の休息(レスパイト)にも

【そのほか】
福祉用具のレンタル・購入:車いす・介護ベッド・歩行器などの貸し出し
住宅改修:手すりの取り付けや段差解消などの費用の一部を介護保険で負担

②施設サービス――施設に入所して受けるサービス

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養):原則として要介護3以上の方が対象。長期入所が可能
介護老人保健施設(老健):退院後のリハビリや在宅復帰を目指す施設。医師や看護師が常駐
介護医療院:長期的な医療と介護の両方が必要な方のための施設

③地域密着型サービス――住み慣れた地域で受けるサービス

2006年に創設された、市区町村が指定・監督する小規模なサービスです。原則として、その市区町村に住民票がある方が対象です。

小規模多機能型居宅介護:「通い」「訪問」「泊まり」を1つの事業所で柔軟に組み合わせて利用できる
認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症の方が少人数で共同生活を送りながら専門的なケアを受ける
定期巡回・随時対応型訪問介護看護:定期的な訪問と緊急時の対応を24時間体制で受けられる

種類がとても多いのですが、全部をご自身で調べる必要はありません。担当のケアマネジャーが、ご本人の状態や生活環境に合ったサービスを一緒に考えてくれます。

介護認定が「非該当」でも大丈夫――総合事業という選択肢

お元気な方の場合、審査の結果「非該当」(介護認定がつかない)となることもあります。

現場ではこんなエピソードも……。👨「ばあちゃん、あんまり元気にしてると要介護をもらえないから、認知症のふりしとけ」なんて息子さんに言われて、一生懸命演技したとかしないとか(笑)。もちろん、認定調査には正直に答えてくださいね。

「非該当」となった方でも、お住まいの自治体が実施する「総合事業」(介護予防・日常生活支援総合事業)の対象になることがほとんどです。介護認定が出なくても使えるサービスはいろいろありますので、ぜひ市区町村や地域包括支援センターの窓口で相談してみてください。

介護保険の本分は「自立支援」――使ってまた元気になろう

最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことです。

介護保険サービスの本分は「自立支援・重度化予防」。介護が必要になったら終わり、ではなく、サービスを使ってもう一度元気を取り戻すための制度です。

実は、法律にもはっきりと書かれています。

介護保険法第4条(国民の努力及び義務)

国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。

つまり「介護状態になったら、進んでリハビリやサービスを利用して、能力の維持向上に努めましょう」と、国の法律が背中を押してくれているのです。

現場では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ専門職をはじめ、医師、看護師、介護士、ケアマネジャー、管理栄養士、保健師など、さまざまな専門職がチームとなって利用者様を支えています。

デイケアに通い始めて歩く力が戻り、「また畑に出られるようになったよ」と笑顔を見せてくれた方。私はそんなふうに、介護サービスをきっかけに元気を取り戻した高齢者の方をたくさん見てきました。

まとめ:介護保険を上手に使って、共倒れを防ぐ

最後に、この記事の要点をふり返ります。

  • 介護保険は2000年開始の公的制度。40歳から全員が加入する「みんなの保険」
  • 要介護・要支援認定者は約708万人、65歳以上の約5人に1人。使うのは当たり前の時代
  • 利用の入り口は市区町村への申請。家族による代理申請もOK
  • サービスは居宅・施設・地域密着型の3分類。選び方はケアマネジャーが一緒に考えてくれる
  • 「非該当」でも総合事業という受け皿がある
  • 介護保険の本分は「自立支援・重度化予防」。使ってまた元気になるための制度

介護は、がんばりすぎないことが長続きのコツです。まずは「知ること」、そして困ったら「相談すること」。お住まいの地域包括支援センターが、最初の相談窓口としてどなたでも無料で利用できます。今日、その場所を確認しておくだけでも、立派な備えの第一歩です。

参考文献・出典一覧

※本記事は公的機関の情報に基づき、現役理学療法士が執筆しています。制度の内容は改正により変わることがあります。個別のご事情に関する判断は、お住まいの市区町村・地域包括支援センター・かかりつけ医などの専門機関にご相談ください。